まだ食欲の無い鉄子と亡き妻のこと。

パピヨン鉄子
まだ、いつもの食欲は戻っていないが朝のササミ粥は食べた。
やはり茹でたての良い香りが食欲をそそるらしく、お世話係も朝から粥を作る。
部屋に満ちるササミの香り。

今朝は寒そうに見えるとお世話係が
鉄子の首に襟巻きをして早朝の散歩に出かけた。


この襟巻きは亡き妻のもの。
妻のことを書いた以前の日記


鉄子は妻亡き後、寂しさからうつ病になりかけた私のもとへやってきた。
お転婆鉄子には手を焼いたが、妻のいない寂しさからは救われた。


お転婆で、元気で、ちょこまかと少しもじっとしてないところは
生前の妻に似ていると、時々思うことがある。
天国から神様が私のために遣わしてくれたのかもしれないとも思う。


そして、鉄子は妻の形見を使っている。
いつも登場する食事の皿は妻が気に入って買ったグラタン皿。
猫の模様で妻は可愛らしいものが好きであった。


洋裁がうまかった妻の血を引いてるのに縫い物など苦手なお世話係が
鉄の仮装に妻の物を使いはじめた。
きっと妻も喜んでいるに違いない。


そして妻は「私が生きてたら鉄に洋服をいっぱい縫ってやったのに」と
思っているだろう。


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